※上記は紙媒体の書籍です。
浪花少年探偵団は、東野圭吾の初期作品のひとつとして知られる連作短編集です。
舞台は大阪・東大阪。小学6年生の担任教師・竹内しのぶ先生を中心に、子どもたちと周囲の大人たちが巻き起こす事件を描いた、推理あり、人情あり、そして笑いありの作品集となっています。
殺人事件というミステリーの王道テーマを扱いながらも、読後感は驚くほど明るい。
それが本作最大の魅力でしょう。
しのぶ先生という唯一無二の主人公
竹内しのぶ先生は、とにかく行動派。
思ったことは即行動、疑問に思えば首を突っ込まずにはいられない。
推理力も鋭く、刑事顔負けの洞察力を見せる一方で、食べることに目がなく、恋愛にはどこか鈍感という人間臭さがたまりません。
お見合い相手の本間氏よりも「クリスマスディナー」に心を奪われてしまう場面や、それに嫉妬する篠塚刑事の分かりやすすぎる感情表現は、もはやコメディ。
しかし、この軽やかさがあるからこそ、物語は重くなりすぎず、最後まで気持ちよく読み進められます。
関西弁が生み出すテンポと臨場感
本作を語るうえで欠かせないのが、コテコテの関西弁です。
舞台は「なにわもなにわ」、かなり東大阪寄りの言葉遣いで、会話文を読んでいるだけでも自然と口元が緩みます。
地の文は標準語、会話は関西弁という構成のため、頭の中で切り替えが必要になる瞬間もありますが、そこは東野圭吾作品。随所に挟まれるユーモアが、良い清涼剤になっています。
今の時代だと不適切と言われかねない表現もありますが、むしろ人間の本音がむき出しで、個人的には「生きやすさ」を感じる部分でもありました。
ミステリー以上に胸を打つ「人の描写」
短編は全5話。
それぞれ独立した事件を扱いながらも、共通して流れているのは「人を見るまなざし」です。
犯人探しやトリックそのものよりも、なぜその人がそう行動したのか、どんな想いを抱えていたのかが丁寧に描かれています。
特に卒業式を扱ったエピソードでは、思わず胸が熱くなりました。
普段は明るく豪快なしのぶ先生だからこそ、不意に見せる教師としての覚悟や愛情が、強く心に刺さります。
東野圭吾氏の真骨頂は、緻密な推理だけでなく、こうした人情味あふれる人物描写にあるのだと再認識させられました。
初期作品だからこそ味わえる魅力
『浪花少年探偵団』は、後年の緻密で重厚な東野圭吾作品とは少し趣が異なります。
古臭さを感じる部分があるのも事実ですが、それ以上にテンポの良さと勢いがあり、短編ならではの読みやすさも抜群です。
しのぶ先生、新藤刑事、本間氏――それぞれの関係性や、ささやかな恋の行方を想像しながら読むのも楽しいポイント。
ミステリー初心者にも、東野圭吾ファンにも、自信をもっておすすめできる一冊です。
※上記は紙媒体の書籍です。


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