
『謎解きはディナーのあとで』の2巻を読んで改めて感じたのは、
「やっぱり、この三人の掛け合いがいいな」
ということでした。
宝生麗子、執事の影山、そして風祭警部。
事件そのものは毎回変わりますが、この三人が登場すると「またこの世界に戻ってきた」という安心感があります。
とくに影山は相変わらずです。
麗子に仕える優秀な執事でありながら、推理のことになると主人に対する遠慮がほとんどありません。
麗子が事件について話せば、丁寧な口調のまま容赦なく切り込んでくる。
そして麗子が怒る。
何度も繰り返される流れなのですが、不思議とそれが嫌になりません。
むしろ2巻になると、
「今回は影山がどんなことを言うのだろう」
と待っている自分がいました。
一方で、2巻まで読むと、このシリーズならではの“型”がはっきりしてきたのも事実です。
それを安心感と感じるのか、少しワンパターンと感じるのか。
このあたりは好みが分かれるところでしょう。
この記事では、東川篤哉さんの原作小説『謎解きはディナーのあとで2』について、ネタバレをできるだけ抑えながら、あらすじや収録作の見どころ、1巻との違い、読んで感じた良かったところ・気になったところを紹介します。
『謎解きはディナーのあとで2』とは?
『謎解きはディナーのあとで2』は、東川篤哉さんによるユーモアミステリー「謎解きはディナーのあとで」シリーズの第2弾です。
主人公の宝生麗子は、国立署に勤務する刑事。
しかし本当の姿は、世界的企業グループ「宝生グループ」の令嬢です。
職場ではその事実を隠し、上司である風祭警部と事件を追っています。
そんな麗子を陰で支えているのが執事の影山です。
影山は麗子から事件について聞いただけで、警察が見落としていた部分に気づき、真相へ近づいていきます。
ただし、そこまでなら普通の名探偵ものです。
この作品が少し違うのは、影山が主人である麗子にまったく遠慮しないところ。
丁寧な言葉遣いのまま、麗子の推理力を容赦なく否定します。
この影山の毒舌と麗子の反応が、ミステリーでありながら重苦しくなりすぎない大きな理由になっています。
本作には、次の6編が収録されています。
- アリバイをご所望でございますか
- 殺しの際は帽子をお忘れなく
- 殺意のパーティにようこそ
- 聖なる夜に密室はいかが
- 髪は殺人犯の命でございます
- 完全な密室などございません
一話ごとに事件が完結するため、長編小説のように「続きが気になって止められない」というタイプではありません。
反対に、
「今日は一話だけ読もう」
という読み方がしやすい作品です。
『謎解きはディナーのあとで2』のあらすじ【ネタバレなし】
基本的な流れは1巻と大きく変わりません。
麗子と風祭警部が殺人事件などを捜査するものの、簡単には真相にたどり着けません。
捜査を終えて帰宅した麗子が影山に事件について話すと、影山は話を聞いただけで事件の矛盾に気づいていきます。
そこで素直に、
「お嬢様、犯人はこの人物でございます」
と言えばよいのですが、影山はそうしません。
麗子の推理について一言、二言、余計なことを言う。
当然、麗子は怒ります。
このやり取りが入ることで、殺人事件を扱っているにもかかわらず、作品全体はかなり軽快です。
本格ミステリーのように一つの事件を何百ページもかけて追う作品ではありませんが、
「なぜ、この状況になっているのか?」
「犯人はどうやってこんなことをしたのか?」
という謎解きの楽しさはきちんとあります。
難しい推理小説を読むほどの気力はないけれど、何かミステリーを読みたい。
そんなときにも手に取りやすい一冊だと思います。
『謎解きはディナーのあとで2』収録6編のあらすじと見どころ
アリバイをご所望でございますか
立川駅近くの雑居ビルで女性が殺害される事件が起こります。
疑わしい人物はいるものの、その人物には犯行が難しいと思われるアリバイがあります。
そこでポイントになるのが、
「そのアリバイは本当に成立しているのか?」
という部分です。
ミステリーではおなじみのアリバイ崩しですが、この作品では複雑な情報を大量に並べるというより、状況の中にある違和感を一つずつ拾っていきます。
麗子たちが見落としている部分に影山が気づく、というシリーズらしい面白さを楽しめる一編です。
殺しの際は帽子をお忘れなく
若い女性が自宅で遺体となって発見され、さらに彼女が集めていた帽子がなくなっているという事件です。
殺人事件と「帽子」。
最初に読むと、
「帽子がなくなっていることに、そこまで意味があるのだろうか?」
と思います。
ところがミステリーでは、こうした一見すると事件と関係なさそうなものが妙に気になります。
なぜ帽子なのか。
なぜ持ち去られたのか。
タイトルは少しコミカルですが、その裏ではきちんと「なぜ?」を考えさせてくれる話になっています。
殺意のパーティにようこそ
この話では、麗子が参加するパーティが事件の舞台になります。
普段は国立署の刑事として行動している麗子ですが、彼女はもともと大企業グループのお嬢様です。
そのため、こうした場面では普段とは少し違う麗子の一面も見えてきます。
『謎解きはディナーのあとで』は事件だけを追いかけても楽しめますが、麗子や影山をはじめとする登場人物の関係を見るのも面白いところです。
2巻まで読んでくると、それぞれのキャラクターがかなり頭に入っているため、事件とは別の部分でも楽しめるようになってきました。
聖なる夜に密室はいかが
「聖なる夜に密室はいかが」で面白いのは、単純に鍵の掛かった部屋から犯人が消えた、というだけではありません。
雪の残る現場で、
「犯人はどうやって出入りしたのか?」
という疑問が浮かび上がります。
雪があるなら、誰かが歩けば跡が残るはずです。
ところが、それだけでは説明できない状況がある。
こうした「できるはずなのに、できない」という状況が提示されると、自分でも答えを考えながら読みたくなります。
難解になりすぎず、キャラクター同士の会話を楽しみながら密室の謎を追えるところも、このシリーズらしい一編です。
髪は殺人犯の命でございます
6編の中でも、とくに触れておきたいのが「髪は殺人犯の命でございます」です。
タイトルからして妙に気になります。
この事件では「髪」が重要な手掛かりとして登場します。
読んでいると、
「どうして、わざわざこんなことをしたのだろう?」
という違和感が残ります。
『謎解きはディナーのあとで』では、ものすごく大掛かりな仕掛けだけではなく、こうした何気ない違和感から真相へつながることがあります。
影山は、麗子たちがそれほど重要視していなかった部分に目を向けます。
それまで意味が分からなかった行動に理由が見えてくる瞬間は、やはりミステリーを読んでいて面白いところです。
また、この2巻では風祭警部にも意外な見せ場があります。
普段は少し頼りなく、麗子から心の中で突っ込まれることも多い人物ですが、「ただのお笑い担当」というだけでは終わりません。
こういう場面があることで、三人の関係にも少しずつ変化が感じられます。
完全な密室などございません
最後の「完全な密室などございません」では、有名画家をめぐる事件が描かれます。
現場となったアトリエは密室状態。
それだけでも十分にミステリーらしい状況ですが、この事件では密室そのものだけではなく、被害者の行動にも気になる部分があります。
「どうやって犯人は犯行を行ったのか」
だけではなく、
「なぜ、このような状況になっているのか」
まで考えながら読む話です。
タイトルの「完全な密室などございません」という言葉も、影山らしいですね。
一冊の最後に置かれていることもあり、事件だけでなく麗子と影山の関係にも注目したくなる一編でした。
「髪は殺人犯の命でございます」は特に注目したい一編
6編の中でも、元の記事を書くときから具体的に触れたくなったのが「髪は殺人犯の命でございます」でした。
この話の面白さは、「髪」という身近なものが事件の違和感につながっているところです。
大掛かりな密室や派手な仕掛けもミステリーの魅力ですが、
「なぜ、そんなことをしたのか?」
という小さな疑問から真相が見えてくる話も面白いものです。
影山の推理を読むと、
「言われてみれば確かにおかしい」
と思う。
この感覚こそ、『謎解きはディナーのあとで』を読んでいて気持ちのいいところなのかもしれません。
1巻と2巻を比べて感じた違い
1巻と2巻を続けて読むと、楽しみ方が少し変わってきます。
1巻では、
「大企業のお嬢様なのに刑事」
「執事なのに主人へ平気で毒舌を吐く」
「自信満々なのに少しズレている風祭警部」
といった設定そのものに新鮮さがあります。
影山が初めて強烈な一言を放つ場面も、1巻だからこそのインパクトがあります。
一方で2巻になると、読者もすでに三人がどんな人物なのかを知っています。
そのため設定への驚きよりも、
「今回はどんな事件なのか」
「影山はどう推理するのか」
「麗子は今回どれくらい怒るのか」
という、“いつもの三人”を楽しむ読み方に変わってきます。
新鮮さなら1巻。
シリーズとしての安心感なら2巻。
そんな違いがあります。
そして、この「お約束を楽しめるようになってくる」というのが、シリーズものの面白さでもあると思います。
→まだ1巻を読んでいない方は、『謎解きはディナーのあとで』1巻の感想・あらすじも紹介しています。

『謎解きはディナーのあとで2』を読んで良かったところ
影山・麗子・風祭警部の掛け合いがやはり楽しい
2巻を読んで一番安心したのは、三人の関係が変わらず楽しめたことでした。
とくに影山と麗子のやり取りは、このシリーズには欠かせません。
影山は執事としては非常に優秀です。
しかし、麗子の推理能力についてだけは一切手加減しません。
言っていることだけを見るとかなり失礼なのですが、言葉遣いだけは妙に丁寧。
そして麗子が怒る。
これを何度も読んでいるはずなのに、また笑ってしまいます。
一話完結だから自分のペースで読める
本作は6編の短編で構成されています。
そのため、
「今日中に全部読まなければ」
という気持ちになりません。
一話読んで本を閉じても問題ありませんし、続きが気になればそのまま次へ進めます。
長編ミステリーの場合は、登場人物や伏線を忘れないうちに読みたいと思うことがありますが、本作ではその負担がかなり少なく感じます。
読書にまとまった時間を取りにくい人にも読みやすい作品です。
重すぎないミステリーとして読める
事件は殺人事件などを扱いますが、作品全体の雰囲気はそれほど重くありません。
影山の毒舌や、風祭警部のどこかズレた言動が入ることで、適度に力が抜けます。
重いミステリーを続けて読んだあとなど、
「今日はもう少し気楽に読めるものがいい」
というときにも手に取りやすいシリーズです。
ミステリーとしての謎解きと、コメディのような会話。
この二つのバランスが、この作品の魅力だと思います。
正直、少し気になったところもある
2巻まで読むと、良くも悪くもシリーズの基本パターンが見えてきます。
事件が起こる。
麗子と風祭警部が捜査する。
解決できずに麗子が帰宅する。
影山に事件を話す。
影山が毒舌を交えながら真相を見抜く。
もちろん細かい展開は毎回違いますが、大きな流れは似ています。
そのため、
「毎回まったく違った展開を読みたい」
という人には、少しワンパターンに感じられるかもしれません。
また、本格ミステリーのような重厚な雰囲気や、非常に複雑なトリックだけを期待すると物足りなさを感じる可能性もあります。
ただ、この“型”があるからこそ、
「今回はどんな事件なのだろう」
と安心して読み始められる面もあります。
ワンパターンなのか、お約束なのか。
これは読む人によって評価が変わるところでしょう。
私は、この安定した雰囲気も含めて『謎解きはディナーのあとで』らしさだと感じました。
『謎解きはディナーのあとで2』はこんな人におすすめ
本作は、次のような人におすすめしやすい作品です。
- 1巻を読んで影山や麗子が好きになった人
- 重すぎないミステリーを読みたい人
- 一話完結の短編が好きな人
- 推理だけでなく登場人物の会話も楽しみたい人
- 読書初心者でも読みやすいミステリーを探している人
- 通勤時間や寝る前などに少しずつ読みたい人
反対に、非常に重厚な本格ミステリーや、毎回まったく違った構成を求める人には少し合わないかもしれません。
「しっかり謎解きはしたい。でも重すぎる作品は疲れる」
というときには、ちょうどよい一冊です。

『謎解きはディナーのあとで2』は2巻から読んでも大丈夫?
事件自体は一話ごとに完結しているため、2巻から読んでも大きく困ることはありません。
ただ、できれば1巻から読むことをおすすめします。
『謎解きはディナーのあとで』の面白さは、事件だけではなく、麗子・影山・風祭警部という三人の関係にもあるからです。
とくに1巻では、
「なぜ影山はこんなに主人へ失礼なのか」
という最初の驚きがあります。
その関係を知ったうえで2巻を読むと、影山が何か言う前から、
「そろそろ来るな」
と思えるようになります。
この“お約束”を楽しめるのも、順番に読む良さです。
読むなら基本的には、
『謎解きはディナーのあとで』
↓
『謎解きはディナーのあとで2』
↓
『謎解きはディナーのあとで3』
の順番で問題ありません。
→2巻を読み終えて続きが気になる方は、『謎解きはディナーのあとで3』の感想・あらすじも紹介しています。

まとめ|2巻は三人の“いつもの掛け合い”を楽しめる一冊
『謎解きはディナーのあとで2』を読んで感じたのは、このシリーズの魅力はトリックだけではないということです。
もちろん、
「犯人は誰なのか」
「どうやって犯行を行ったのか」
を考える面白さはあります。
しかし、それと同じくらい、
影山の毒舌。
それに怒る麗子。
妙な方向へ推理を進める風祭警部。
この三人の掛け合いを楽しみに読み進めていました。
2巻になると、1巻で感じた設定そのものの新鮮さは少し落ち着きます。
その代わり、
「これこれ、この感じ」
と思える安心感があります。
展開がある程度パターン化されているため、そこは好みが分かれるかもしれません。
ただ、一話ずつ気軽に読めて、少し笑えて、きちんと謎解きも楽しめる。
重いミステリーを読むほどの気分ではない日に、ちょうどよい一冊です。
1巻を楽しめた人であれば、2巻でも影山・麗子・風祭警部の三人を安心して楽しめると思います。


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