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【書評】東野圭吾『しのぶセンセにサヨナラ』|笑って少し切ない、しのぶセンセ最後の活躍


※上記は紙媒体の書籍です。

『しのぶセンセにサヨナラ』は、東野圭吾が描く異色の教師探偵・しのぶセンセシリーズの第2弾、そして最終章にあたる作品です。

前作同様、関西弁の軽快な会話とテンポの良い展開で、肩の力を抜いて楽しめる一冊。

しかし読み進めるうちに、ただの軽いミステリーでは終わらない、じんわりとした余韻が胸に残ります。

しのぶセンセと元教え子たちの不思議な関係

物語の中心にいるのは、小学校教師のしのぶセンセ。

型破りで行動力抜群、子どもたちと真正面から向き合う姿勢は相変わらず健在です。

今回は、すでに中学生になった元教え子たちとの関係が描かれ、「先生と生徒」という枠を少し超えた不思議な距離感が物語に独特の味わいを与えています。

正直なところ、「中学生になっても小学生時代の先生とつるむかな?」とツッコミたくなる部分もあります。

しかし、しのぶセンセの人柄を考えると、なぜか納得してしまう。

彼女は“先生”である前に、一人の大人として子どもたちに寄り添い続ける存在なのです。

近場で起こる事件と探偵ごっこのようなミステリー

本作で描かれる事件は、殺伐とした凶悪犯罪ではなく、身近でどこか生活感のある出来事が中心です。

だからこそ、元教え子たちと一緒に事件を追う様子が、まるで探偵ごっこのように映ります。

この「危険すぎない距離感」が、本作の読みやすさを支えています。

特に後半に収録された「引っ越し」と「復活」のエピソードは印象的です。

単なる謎解きにとどまらず、しのぶセンセが“教育者として何を大切にしているのか”が自然と伝わってきます。

説教くさくないのに、心に残る。このバランス感覚は、さすが東野圭吾だと感じさせられました。

会話の面白さと人情味あふれる描写

本作の大きな魅力は、やはり会話の面白さでしょう。

関西弁によるテンポの良いやり取りは、読んでいるだけで自然と笑みがこぼれます。

中でも、新藤との酒の席で繰り広げられる、しのぶセンセと新藤の母親との掛け合いは秀逸。

事件とは直接関係ない場面でありながら、キャラクターの人間味が濃く表れており、作品全体に温かさを与えています。

こうした日常の延長線上にある描写があるからこそ、しのぶセンセのバイタリティや優しさがより際立つのです。

「サヨナラ」が示す、ちょうどいい終わり方

タイトルに「サヨナラ」とある通り、本作はシリーズの締めくくりとなっています。

物語は、きれいに完結しすぎるわけでもなく、どこか余白を残した形で幕を閉じます。

その終わり方がまた絶妙で、「ここで終わらせるのも分かるけれど、続きがあったら読んでみたい」と素直に思わせてくれます。

しのぶセンセや元教え子たちの未来を、読者にそっと委ねるようなラストは、少し寂しく、それでいて温かい。

だからこそ、シリーズが二作で終わってしまったことが惜しく感じられるのです。

軽く読めて、心に残る一冊

『しのぶセンセにサヨナラ』は、重厚なトリックや衝撃的な展開を求める人には向かないかもしれません。

しかし、気軽に読めて、読み終えた後にほんのり元気をもらえる。

そんな作品を探している人には、これ以上ない一冊です。

教師として、そして一人の大人として子どもたちに向き合うしのぶセンセの姿は、読者の心にも静かに寄り添ってくれます。

笑って、少し切なくなって、最後は優しい気持ちになる。

そんな読書体験を味わいたい人に、ぜひおすすめしたい作品です。


※上記は紙媒体の書籍です。

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