「頭のいい人は、特別な才能があるのではない。考え続けているだけだ。」
本書『東大教授の考え続ける力がつく 思考習慣』を読み終えたとき、まず印象に残ったのはこの考え方でした。
著者は東京大学教授であり、渋滞学の研究でも知られる西成活裕氏。
本書では、思考力とは生まれつきの能力ではなく、筋トレのように鍛えられる“体力”のようなものだと説きます。
普段何気なく「考える」と言っている行為を分解し、具体的な思考習慣として提示している点が非常にわかりやすい一冊でした。
思考力は「思考体力」である
本書の大きなテーマは「考える力=思考体力」という考え方です。
多くの人は「考えるのが苦手」「頭が良くないから」と思いがちですが、著者はそれを否定します。
考える力は筋力と同じで、日々使い続けることで鍛えられるというのです。
確かに、仕事や生活の中で一時的に考えることはあっても、「考え続ける」ことは意外と難しいものです。
スマートフォンやSNSなど、思考を中断させるものは身の回りにあふれています。
そんな現代だからこそ、思考を習慣として鍛える必要があるという指摘には大きくうなずかされました。
「考える力」を7つに分解する発想
本書の最大の特徴は、思考力を7つの能力に分類している点です。
これによって、漠然としていた「考える力」が具体的なトレーニング対象として見えてきます。
著者が挙げている7つの思考力は次の通りです。
- 自己駆動力
自分から能動的に考え始める力。 - 多段思考力
一段先ではなく、その先の未来まで見通して考える力。 - 疑い力
常識や前提を疑う姿勢。 - 対局力
物事を俯瞰して全体を見渡す力。 - 場合分け力
情報を整理し、可能性を分類して考える力。 - ジャンプ力
思考を飛躍させ、新しい発想を生む力。 - 微分思考力
問題を細かく分解して理解する力。
この分類を見たとき、「なるほど、思考とはこういう要素でできているのか」と妙に納得しました。
普段は無意識に行っている思考を言語化すると、ここまで整理できるのかと驚かされます。
数学者らしい具体例が面白い
本書には、抽象的な理論だけでなく、興味深い具体例も多く登場します。
例えば「配送ルート問題」。
これは、いかに効率よく荷物を届けるかという問題で、数学的思考の典型例として紹介されています。
また、数字のトリックや統計の読み方など、日常生活にも関わる話題も多く、「考えるとはどういうことか」を身近な視点で理解できます。
特に印象に残ったのは、「努力と目標のベクトルを合わせる」という考え方です。
どれだけ努力していても、方向が間違っていれば結果は出ない。
これは仕事でも勉強でも非常に重要な視点だと感じました。
キャリアと人生の考え方にも踏み込む
本書の前半では、キャリアや人生の方向性についても語られています。
著者自身の大学院時代の苦労話は、なかなか壮絶です。
研究が思うように進まず、それでも考え続けることで道を切り開いていった経験が語られています。
ここで印象的だったのが、「好きなこと × 人の役に立つこと」という考え方です。
自分の興味だけでなく、社会にどう価値を提供できるか。
この視点を持つことで、人生の方向性がより明確になるというのです。
就職して何年も経っている人ほど、少し耳が痛い内容かもしれません。
しかし、それだけに考えさせられる部分が多い章でした。
コミュニケーションとメンタルの話も興味深い
後半では、コミュニケーションやメンタルの話にも触れられています。
数学や理系の研究者らしい視点で、人間関係を分類して考える方法が紹介されており、「理系の人はこういう整理の仕方をするのか」と新鮮に感じました。
また、東大教授である著者自身もストレス対策を重視している点が印象的です。
どれだけ優秀な人でも、思考力を維持するためにはメンタル管理が必要なのだと知り、少し身近に感じました。
思考習慣を身につけたい人におすすめの一冊
『東大教授の考え続ける力がつく 思考習慣』は、「考える力」を具体的に鍛えるための実践的な本です。
難しい専門書ではなく、日常生活の中で思考を習慣化するヒントが多く詰まっています。
特に、
・思考力を鍛えたい人
・仕事で考える力を伸ばしたい人
・論理的思考に興味がある人
には強くおすすめできる一冊です。
読後、「自分はまだまだ考え続ける力が足りない」と感じました。
同時に、思考も筋トレのように鍛えられるのだと知り、少し前向きな気持ちにもなります。
考えることを習慣にしたい人にとって、本書は良いスタート地点になるでしょう。


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