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『medium 霊媒探偵城塚翡翠』感想・あらすじ|ネタバレなしで魅力を紹介

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』感想・あらすじ|ネタバレなしで魅力を紹介

死者の声を聞くことができる霊媒師。

その情報をもとに、論理で事件の真相を追う推理作家。

相沢沙呼さんの『medium 霊媒探偵城塚翡翠』は、「心霊」と「本格ミステリー」を組み合わせた作品です。

霊能力があるなら、簡単に犯人を見つけられるのでは?

そう思うかもしれません。

しかし、霊媒によって得た情報には証拠能力がありません。

そこで必要になるのが、現実の証拠と論理です。

この設定だけでも十分に面白いのですが、本作の魅力はそれだけではありません。

物語を最後まで読んだとき、それまで何気なく読んでいた場面をもう一度確認したくなるような構成になっています。

ただし、この作品は事前に情報を知りすぎない方が楽しめます。

この記事では、『medium 霊媒探偵城塚翡翠』のあらすじや4つの事件、作品の魅力、気になるところを紹介します。

犯人名・トリックの核心・重要な真相・結末は明かしません。

作品データ

項目内容
書名medium 霊媒探偵城塚翡翠
著者相沢沙呼
出版社講談社
単行本発売2019年9月
ジャンル本格ミステリー
シリーズ城塚翡翠シリーズ第1作
主な登場人物城塚翡翠・香月史郎

単行本は2019年に発売され、その後、文庫化やコミカライズ、テレビドラマ化もされています。

本作は第20回本格ミステリ大賞を受賞。

さらに複数のミステリーランキングで1位となり、5冠を獲得した作品です。

あらすじ【ネタバレなし】

推理作家の香月史郎は、城塚翡翠という女性と出会います。

翡翠には、普通の人にはない力がありました。

死者を見ることができ、ときには死者から情報を受け取ることもできる霊媒です。

事件の被害者から話を聞けるのであれば、犯人を簡単に見つけられそうです。

ところが、大きな問題があります。

霊媒によって得た情報は、警察が犯人を逮捕するための証拠にはなりません。

そのため香月は、翡翠が得た情報をもとに事件を調べ、

「霊能力を使わなくても説明できる証拠」

を探していきます。

心霊と論理。

正反対に見える二つを組み合わせながら、二人は事件に向き合います。

その一方で、世間では女性を狙った連続死体遺棄事件が発生していました。

証拠を残さない犯人。

事件は少しずつ翡翠たちにも近づいていきます。

この作品は面白い?

結論からいえば、

伏線やミスリードのある本格ミステリーが好きなら、読んでみる価値のある作品です。

ただし、本作については、

「ここがすごい」

と詳しく説明すること自体が難しくなっています。

説明すればするほど、読む前には知らない方がよい部分へ近づいてしまうからです。

まず注目したいのは、

霊媒で得た情報を、どうやって論理的な推理へ変えるのか

という点です。

超常現象が登場しますが、何でも霊能力で解決するわけではありません。

むしろ、

「答えにつながる情報はある。しかし、それをどう証明するのか?」

という制約があることで、ミステリーとしての面白さが生まれています。

そして最後まで読むと、事件一つひとつだけではなく、物語全体についても振り返りたくなります。

初めて読むときは、あまり先を予想しすぎずに読む方が楽しみやすい作品です。

4つの事件を収録

本作は、4つの事件が連なる形で物語が進みます。

順番エピソード
第一話泣き女の殺人
第二話水鏡荘の殺人
第三話女子高生連続絞殺事件
最終話VSエリミネーター

それぞれの間にはインタールードが入り、最後にエピローグがあります。

一つずつ事件を楽しみながら、物語全体としても最終話へ向かって進んでいく構成です。

泣き女の殺人

香月と翡翠が事件に向き合う中で、

「霊媒と論理をどう組み合わせるのか」

という本作の基本が見えてきます。

霊的な情報があったとしても、それだけで事件を解決することはできません。

現実の世界で説明できる証拠を見つける必要があります。

まずは、この作品独自のルールを楽しみたい一編です。

水鏡荘の殺人

舞台が変わり、新たな事件が起こります。

ここでも重要なのは、

翡翠が得た情報を香月がどのように推理へつなげるのか。

単純に「霊が犯人を教えてくれる」という展開ではなく、情報と証拠の間をどう埋めるのかがポイントになります。

女子高生連続絞殺事件

物語が進むにつれて、雰囲気も少しずつ変わっていきます。

個別の事件を追うだけではなく、登場人物や物語全体にも目を向けたくなるところです。

ただ、この段階でも答えを予想しすぎる必要はありません。

感じた疑問をそのまま持ったまま読み進める方が、本作を楽しみやすいでしょう。

VSエリミネーター

最終話です。

それまで背景にあった連続死体遺棄事件が、物語の中心へ近づいてきます。

この先については、できるだけ何も知らずに読むことをおすすめします。

『medium』の評価を大きく左右する部分でもあるため、詳しい説明は控えます。

「霊媒×論理」が魅力

本作を特徴づけているのが、

霊能力を使えるのに、それだけでは事件を解決できない

という設定です。

たとえば霊媒によって重要な情報を得られたとしても、

「死者から聞きました」

では証拠にはできません。

そこで香月が考えます。

現場には何が残っているのか。

なぜ、その人物にしか犯行ができなかったのか。

どうすれば霊的な情報を使わずに同じ結論へたどり着けるのか。

オカルトと本格ミステリーは、相反するようにも見えます。

しかし本作では、その違いそのものを推理の仕組みにしています。

これが『medium』ならではの面白さです。

伏線は探さない方がいい?

『medium』について調べると、「伏線」という言葉をよく目にします。

実際、読み終えてから振り返りたくなる部分の多い作品です。

ただし、初読から、

「ここが伏線では?」

「この人物は怪しいのでは?」

と探し続ける必要はありません。

むしろ、最初は普通に物語を追う方がおすすめです。

事件が起こる。

翡翠が情報を得る。

香月が論理を組み立てる。

まずは、この流れを楽しむ。

そして読み終えたあとで、気になった場面を振り返る。

一度目と二度目で場面の受け取り方が変わる可能性があることも、本作の魅力です。

高く評価された本格ミステリー

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』は、第20回本格ミステリ大賞を受賞しています。

さらに、

「このミステリーがすごい!」2020年版国内編。

「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング。

「SRの会ミステリベスト10」。

などでも1位となり、5冠を獲得しました。

2020年本屋大賞にもノミネートされています。

ただ、受賞歴を知らなくても楽しめる作品です。

むしろ、

「なぜこれほど評価されたのだろう?」

と思いながら読み、最後に自分なりの答えを出してみるのもよいでしょう。

気になったところ

評価の高い作品ですが、好みが分かれそうな部分もあります。

キャラクター性が強い

城塚翡翠は、かなり特徴のある人物です。

話し方や振る舞いも含めて、キャラクター性が強く感じられる場面があります。

硬派な警察小説や、人物描写を抑えた本格ミステリーが好きな人には、少し慣れが必要かもしれません。

ただし、この作品では登場人物を途中だけで判断せず、最後まで見届けた方がよいでしょう。

オカルト要素がある

霊媒師が中心人物なので、霊視や死者といった要素は避けられません。

超常現象が出てくるミステリーそのものが苦手な人には、入りにくい可能性があります。

一方で、事件の解決では論理が重要です。

何でも超能力で片づける作品ではありません。

前情報を入れすぎると楽しみが減る

本作について検索すると、

「伏線」

「衝撃」

「どんでん返し」

など、さまざまな言葉が出てきます。

しかし、その情報を集めすぎると、

「何か起きるはずだ」

と身構えた状態で読むことになります。

『medium』については、詳しい考察を読むより先に本編を読む方がおすすめです。

こんな人におすすめ

向いている人理由
本格ミステリーが好き論理による事件解決を楽しめる
伏線のある作品が好き読後に振り返る楽しみがある
少し変わった探偵ものを読みたい霊媒師と推理作家の組み合わせが特徴
オカルトミステリーが好き心霊要素が物語の中心にある
再読できる作品が好き読み返すと印象が変わる部分がある
城塚翡翠シリーズを読みたい本作がシリーズ第1作

逆に、超常現象が登場するミステリーが苦手な人や、キャラクター性の強い作品を好まない人には、少し合わない可能性があります。

シリーズを読む順番

城塚翡翠シリーズは、現在3作あります。

順番作品
1medium 霊媒探偵城塚翡翠
2invert 城塚翡翠倒叙集
3invert II 覗き窓の死角

これからシリーズを読むのであれば、必ず『medium』から始めることをおすすめします。

第2作以降を先に読むと、第1作を初めて読むときの楽しみを損なう可能性があります。

『medium』を読み終えてから、そのまま『invert』へ進むのが自然です。

仕掛けを楽しむならこちらも

「最後まで読んだあと、物語全体をもう一度振り返りたくなるミステリー」が好きなら、綾辻行人さんの『時計館の殺人』も候補になります。

作品の設定や仕掛けはまったく違います。

ただ、

「読んでいた世界をもう一度考え直したくなる」

という楽しさがあります。

仕掛けのある本格ミステリーをもう一冊読みたい方は、『時計館の殺人』の感想も参考にしてください。

綾辻行人『時計館の殺人』感想・あらすじ|館シリーズ第5作の魅力【後半ネタバレあり】
綾辻行人『時計館の殺人』の感想とあらすじを紹介。館シリーズ第5作の読みどころ、読む順番、新装改訂版・電子合本版・愛蔵版について解説します。前半はネタバレなし、後半も犯人名やトリックの核心を伏せて考察します。

ここから軽いネタバレあり

ここからは犯人名・トリックの核心・重要な真相・結末には触れませんが、作品を最後まで読んだときの印象について少し触れます。

完全に前情報なしで読みたい方は、「感想まとめ」まで飛ばしてください。

本作で特に面白いのは、

個々の事件だけを解いて終わる作品ではないこと

です。

序盤では、「霊媒×推理」という設定そのものに目が向きます。

翡翠が得た情報を、香月がどのように論理へ変換するのか。

そこだけを追ってもミステリーとして楽しめます。

しかし最後まで読むと、事件とは別に、

「自分はこの物語をどう見ていたのだろう?」

と考えたくなります。

何気ない会話。

登場人物の言葉。

そのときには特に気にしなかった場面。

そうした部分を最初から確認したくなる。

ここが『medium』の強みです。

大きな仕掛けだけで驚かせるのではなく、それまで読んできた文章そのものを振り返らせる力があります。

そのため、初読では細かく分析しすぎず、物語の流れに乗って読む方がよいでしょう。

そして読み終えたあと、

「最初からもう一度読んだら、どう見えるだろう?」

と思えたなら、本作の面白さをもう一度味わえます。

感想まとめ

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』は、

霊媒と論理を組み合わせた本格ミステリー

です。

城塚翡翠は、死者から情報を得ることができる。

しかし、その情報だけでは事件を解決したことにはなりません。

そこで推理作家・香月史郎が、現実の証拠と論理によって真相へ近づいていきます。

この仕組みだけでも、十分に特徴のあるミステリーです。

さらに4つの事件を読み進めていくと、一冊を通した物語としての面白さも見えてきます。

本作については、事前に詳しく調べすぎる必要はありません。

あらすじと、

「霊媒情報を論理で証明するミステリー」

という設定だけ知っていれば十分です。

まずはそのまま最後まで読む。

そして読後に、気になった場面を振り返ってみる。

そんな読み方が向いています。

本格ミステリーが好きな人。

伏線のある作品が好きな人。

一度読んだあとに、もう一度確かめたくなる作品を探している人。

そんな人におすすめしたい一冊です。

できるだけ事前情報を入れずに、この作品の仕掛けを自分で確かめたい方は本編から読んでみてください。

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