
「もっとメンタルが強ければ、こんなに悩まずに済むのに」
失敗をいつまでも引きずったり、人から言われた何気ない言葉を何度も思い返したりすると、つい自分の心の弱さを責めたくなります。
私も「気持ちの切り替えがうまい人になれたら楽なのに」と思うことがあります。
そんなときに気になったのが、下園壮太さんの著書『とにかくメンタル強くしたいんですが、どうしたらいいですか?』でした。
タイトルだけを見ると、精神的に強くなるためのトレーニングや、落ち込まなくなる考え方が紹介されているように感じます。
ところが、読み進めていくと、本書が教えてくれるのは「もっと強くなる方法」ではありません。
むしろ、
無理に強くなろうとしなくてもいい。疲れているなら、まず休んだほうがいい。
という、少し意外な考え方でした。
頑張ることを求める自己啓発本が多いなかで、本書は疲れている人にさらに努力を要求しません。
「今の自分に必要なのは、気合いではなく休養かもしれない」
そう気づかせてくれる一冊です。
『とにかくメンタル強くしたいんですが、どうしたらいいですか?』はどんな本?
本書は、メンタルが弱いと感じている人に向けて、心を守るための考え方や具体的な休み方を紹介している本です。
著者の下園壮太さんは、自衛隊で心理教官を務めた経験を持ち、長年にわたって心のケアに携わってきた人物です。
そのため、本書に書かれている内容は、単なるポジティブ思考や精神論とは少し違います。
「前向きに考えれば大丈夫」
「嫌なことは気にしなければいい」
といった言葉だけでは、すでに疲れている人の心には届かないことがあります。
本書はそうした現実を踏まえたうえで、心の状態だけを見るのではなく、身体の疲れや生活リズムにも目を向けています。
本書の中心にあるのは、次のような考え方です。
メンタルを無理に強くしようとする前に、疲れを減らし、自分に合った心の守り方を知る。
読んだからといって、翌日から何が起きても平気な人になれるわけではありません。
しかし、自分を責め続ける悪循環から抜け出すためのヒントは、数多く見つけられます。
本書は、精神論で無理に自分を奮い立たせるのではなく、疲れを減らしながら心を守る方法を知りたい人に向いています。詳しい内容が気になる方は、Amazonの商品ページで目次や書籍情報も確認できます。

この本を読もうと思った理由
人は落ち込んでいるときほど、「自分には何かが足りない」と考えがちです。
もっと努力しなければいけない。
もっと前向きにならなければいけない。
もっと心を鍛えなければいけない。
けれど、何かを足そうとすればするほど、かえって苦しくなることがあります。
私自身も、気分が落ち込んだときに、その原因を何度も考えてしまうことがあります。
「あのとき、違う言い方をしていればよかった」
「なぜ、あんな小さなことで落ち込んでいるのだろう」
そうやって考え続けているうちに、最初の悩み以上に疲れてしまいます。
本書のタイトルを見たとき、私は「落ち込まない考え方を学べるのだろう」と思っていました。
しかし、実際に書かれていたのは、落ち込まない人になる方法というよりも、落ち込んでいる自分を必要以上に追い込まない方法でした。
この違いが、本書の大きな特徴だと思います。
読んで印象に残った3つの考え方
メンタルの弱さよりも「疲れ」を疑う
本書で特に印象に残ったのは、気分が落ち込んでいるときには、心だけでなく身体の疲れにも目を向けるという考え方です。
私たちは気持ちが沈むと、すぐに性格や能力の問題だと考えてしまいます。
「自分は打たれ弱い」
「考え方が暗い」
「精神的に未熟だ」
しかし、本書では、疲労がたまっている状態では、物事を普段よりも悪い方向に捉えやすくなると説明されています。
確かに、疲れている夜に深刻に悩んでいたことが、しっかり眠った翌朝には、それほど大きな問題に思えなくなることがあります。
問題が完全になくなったわけではありません。
それでも、休んだことで、問題を受け止める力が少し戻ったのでしょう。
この部分を読んでからは、気分が落ちたときに、すぐ「自分のメンタルが弱い」と結論づけるのではなく、
「今日は疲れていないだろうか」
「最近、きちんと眠れているだろうか」
と考えることも必要なのだと思うようになりました。
強くなるために、何かを足さなくてもいい
一般的な自己啓発本では、新しい習慣を始めることがよく勧められます。
早起きをする。
運動をする。
目標を書く。
毎日勉強する。
もちろん、どれも役立つ方法です。
ただし、すでに疲れている人にとっては、新しい習慣がさらに負担になることもあります。
本書で語られているのは、何かを足すことよりも、負担を減らすという考え方です。
予定を減らす。
無理な付き合いを断る。
睡眠時間を確保する。
何もしない時間をつくる。
読みながら、私は「自分を変えようとすること自体が、負担になっている場合もあるのかもしれない」と考えさせられました。
気持ちが落ちているときほど、大きな目標を立てて自分を奮い立たせたくなります。
けれど、本当に必要なのは、新しい努力ではなく、背負っている荷物を一度下ろすことなのかもしれません。
不安を消すのではなく、役割を理解する
不安を感じると、私たちはそれを早く消そうとします。
「考えても仕方がない」
「もっと前向きになろう」
そう言い聞かせても、不安はなかなか消えてくれません。
本書では、不安は単なる邪魔な感情ではなく、自分を危険から守ろうとする反応でもあると説明されています。
例えば、仕事で失敗しないか不安になるのは、きちんと仕事をしたいと思っているからです。
将来のお金が不安なのは、これからも安心して暮らしたいと思っているからです。
そう考えると、不安を感じること自体が悪いわけではありません。
むしろ、不安を感じている自分をさらに責めることで、苦しさが二重になっているのではないでしょうか。
不安を完全になくそうとするのではなく、
「自分は何を心配しているのだろう」
「この不安は、何を守ろうとしているのだろう」
と考える。
それだけでも、不安との距離が少し変わるように感じました。
特に心に残った「頑張らないことを頑張る」という考え方
本書のなかで、私が最も考えさせられたのは、休むことに対する向き合い方です。
休日になると、私たちは何か有意義なことをしなければならないと考えます。
本を読む。
運動をする。
勉強する。
部屋を片づける。
せっかくの休みなのだから、時間を無駄にしたくないと思うからです。
ところが、予定していたことができないまま一日が終わると、
「今日は何もできなかった」
「貴重な休日を無駄にしてしまった」
と落ち込んでしまいます。
しかし、疲れを回復させるために眠ったり、ぼんやり過ごしたりしたのであれば、本当に何もしていないのでしょうか。
翌日から動くための力を取り戻したと考えれば、それも必要な時間だったはずです。
何もしない休日を過ごすことは、怠けることとは違います。
自分の状態を守るために、あえて予定を入れない。
頑張ることが当たり前になっている人にとっては、むしろこちらのほうが難しいかもしれません。
本書を読んで、休むことにも練習が必要なのだと感じました。
この本を読んで実際に意識したいこと
疲れているときに大きな決断をしない
強く落ち込んでいるときは、物事を極端に考えてしまいがちです。
「もう全部やめたほうがいい」
「自分には向いていない」
「これから先もうまくいかない」
そんな考えが浮かんだときには、その場ですぐに答えを出さないことが大切です。
まず眠る。
食事を取る。
少し時間を置く。
問題について考えるのは、それからでも遅くありません。
休んだからといって、すべての問題が解決するわけではありません。
それでも、疲れ切った状態で出した結論より、少し回復してから考えた結論のほうが、自分にとって納得できるものになるはずです。
休日に何もしない時間をつくる
休日を充実させようとして、予定を詰め込みすぎないことも意識したいと思いました。
読書や勉強は、自分のためになる行動です。
しかし、「絶対にやらなければならない」と思い始めた瞬間、それは休養ではなく新しい義務になります。
何も考えずにテレビを観る。
昼寝をする。
近所をゆっくり歩く。
好きな飲み物を飲む。
そうした時間にも意味があると認めることが、心を守ることにつながります。
落ち込んだときに自分を分析しすぎない
悩みの原因を考えることは大切です。
ただし、疲れているときに原因を探し続けると、かえって自分を追い詰めることがあります。
「なぜ自分はこうなのだろう」
「何が間違っていたのだろう」
と考え続けても、すぐに答えが出るとは限りません。
そんなときは、原因究明よりも休養を先にする。
元気が戻ってから、必要であれば改めて考える。
本書を読んで、そのような順番もあるのだと知りました。
この本を読んでよかった点
本書を読んでよかったと感じたのは、「メンタルが弱い」という言葉だけで自分を決めつけなくてよいと思えたことです。
落ち込みやすいのは、必ずしも性格が弱いからではありません。
疲れているのかもしれない。
無理をしすぎているのかもしれない。
自分に合わない環境で頑張り続けているのかもしれない。
そう考えれば、必要なのは自分を責めることではなく、生活や負担を見直すことです。
また、本書は読者に「さらに頑張りなさい」と迫りません。
自己啓発本を読むことさえ苦しくなっている人にも、比較的受け入れやすい内容だと思います。
精神論に偏らず、睡眠や休養といった現実的な行動に落とし込んでいる点も、本書の魅力です。
読んで気になった点・注意したい点
一方で、本書の考え方だけですべての悩みが解決するわけではありません。
睡眠や休養は大切ですが、仕事、人間関係、経済的な問題など、休むだけでは変えられない悩みもあります。
また、十分な睡眠時間を確保したくても、仕事や家庭の事情で難しい人もいるでしょう。
そのため、本書の内容を読んで、
「8時間眠れない自分はだめだ」
と新たに自分を責めてしまっては、本来の目的から外れてしまいます。
書かれている方法をすべて実行するのではなく、自分にできる範囲から取り入れる読み方がよいと思います。
なお、強い落ち込みや不眠、日常生活への支障が長く続いている場合は、本だけで解決しようとせず、医療機関や専門家に相談することも大切です。
この本がおすすめな人
『とにかくメンタル強くしたいんですが、どうしたらいいですか?』は、次のような人におすすめです。
- 自分はメンタルが弱いと思っている人
- 小さな失敗を長く引きずってしまう人
- 人から言われた言葉を何度も思い返す人
- 休むことに罪悪感がある人
- 何事にも真面目に取り組みすぎる人
- ポジティブ思考に疲れてしまった人
- 精神論ではなく、現実的な心の守り方を知りたい人
特に、すでに十分頑張っているのに、「もっと頑張らなければ」と考えている人には、一度読んでほしいと思います。
この本が合わないかもしれない人
反対に、次のような本を求めている人には、少し物足りなく感じるかもしれません。
- 厳しい言葉で背中を押してほしい人
- 短期間で人生を大きく変える方法を知りたい人
- 成功習慣や目標達成術を学びたい人
- 専門的な心理学や医学の解説を求めている人
- すぐに実行できるテクニックだけを知りたい人
本書は、勢いをつけて前進するための本というよりも、疲れて立ち止まっている人が自分を立て直すための本です。
今の自分が「進みたい状態」なのか、「まず休みたい状態」なのかによって、受け取り方は変わるでしょう。
『とにかくメンタル強くしたいんですが、どうしたらいいですか?』を読んだ総合評価
本書を読む前は、メンタルを強くするには、落ち込まない考え方や気持ちの切り替え方を身につける必要があると思っていました。
しかし、読み終えたあとは、少し考え方が変わりました。
心を強くすることよりも、まず疲れ切らないように自分を守ること。
落ち込んだ自分を責める前に、睡眠や休養が足りているかを確認すること。
不安を無理に消すのではなく、「何を守ろうとしているのか」と考えること。
どれも派手な方法ではありません。
けれど、実際に生活へ取り入れるなら、こうした地味な方法のほうが長く続けられるように思います。
本書は、鋼のような心を手に入れるための本ではありません。
傷ついたり、落ち込んだりする自分と、無理なく付き合っていくための本です。
「もっと強くなりたい」と思っている人だけでなく、
「もうこれ以上、頑張り続けるのは疲れた」
と感じている人にも、静かに寄り添ってくれる一冊だと思います。
本書は、心を強くするために努力を重ねる本ではありません。すでに頑張りすぎている人が、自分を休ませるための考え方を学べる一冊です。「もっと頑張らなければ」と自分を追い込んでしまう方は、一度手に取ってみる価値があると思います。

まとめ|心を強くする前に、疲れた自分を休ませる
『とにかくメンタル強くしたいんですが、どうしたらいいですか?』を読んで感じたのは、メンタルの強さとは、何が起きても傷つかないことではないということです。
落ち込んだら休む。
疲れているときには、大きな決断を急がない。
自分を責める前に、今の状態を確かめる。
苦手なことや無理なことから、少し距離を取る。
そうやって自分を守れることも、立派な強さなのだと思います。
真面目な人ほど、休むことにも理由を求めてしまいます。
しかし、疲れているなら、それだけで休む理由としては十分です。
「もっと頑張らなければ」と自分を追い込んでいる人にとって、本書は立ち止まる許可を与えてくれます。
強い自分になろうとする前に、まず今の自分を疲れさせすぎないこと。
それが、本書から受け取った最も大切なメッセージでした。


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