
東野圭吾さんといえば、複雑な事件や重い人間心理を描くミステリーを思い浮かべる人も多いでしょう。
『おれは非情勤』は、そんな作品とは少し雰囲気が違います。
主人公は、小学校の非常勤講師として働く「おれ」。
本当に目指しているのは推理作家です。
教師という仕事に必要以上に深入りするつもりはなく、子どもたちとも距離を取ろうとしています。
ところが、赴任する学校ではなぜか事件が起こります。
そして「おれ」は、結局その謎を放っておけません。
本作は、もともと小学生向けの学習雑誌に掲載された作品を中心にまとめたミステリーです。
一話が短く、難解すぎるトリックも少ないため、東野圭吾作品の中ではかなり入りやすい一冊です。
この記事では、『おれは非情勤』のあらすじ、収録8編、作品の面白さや気になるところを、核心部分のネタバレを避けながら紹介します。
作品データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | おれは非情勤 |
| 著者 | 東野圭吾 |
| 出版社 | 集英社 |
| 発売日 | 2003年5月20日 |
| レーベル | 集英社文庫 |
| ページ数 | 272ページ |
| ジャンル | ミステリー・短編集 |
集英社公式では、本作を「推理作家をめざす小学校の非常勤講師」が怪事件に挑む異色ミステリーとして紹介しています。
主人公の名前は明かされず、物語は「おれ」の視点を中心に進みます。
あらすじ【ネタバレなし】
主人公の「おれ」は、小学校で働く非常勤講師です。
ただし、
「教師こそ自分の天職だ」
と考えているわけではありません。
目標は推理作家になること。
非常勤講師は仕事として割り切り、子どもたちとも必要以上に親しくならないようにしています。
ところが、赴任先では次々と不可解な出来事に遭遇します。
殺人事件。
盗難。
子どもたちの間で起きる問題。
意味の分からない数字や言葉。
推理作家を目指しているだけあって、「おれ」は小さな違和感を見逃しません。
本人は「非情」に徹しているつもりでも、謎を追っていくうちに子どもたちの抱えている問題にも関わることになります。
学校という身近な場所と、ミステリーを組み合わせた作品です。
『おれは非情勤』は面白い?
結論からいうと、
短い時間で謎解きを楽しみたい人には、かなり読みやすい作品です。
本作の謎は、『容疑者Xの献身』のような複雑な頭脳戦とは違います。
数字。
言葉。
学校にあるもの。
子どもたちの行動。
身近なところに手掛かりがあります。
そのため、読者も、
「この数字にはどんな意味がある?」
「なぜ、この行動をした?」
と一緒に考えやすくなっています。
一方で、東野圭吾作品をたくさん読んでいる人には、謎が比較的素直に感じられるかもしれません。
それでも、
自分でも答えを考えながら読める楽しさ
があります。
重い長編ではなく、気軽に東野圭吾作品を読みたいときに向いています。
収録されている8編
本書は、大きく二つに分けられます。
まず、非常勤講師の「おれ」が登場する『おれは非情勤』の6章です。
- 6×3
- 1/64
- 10×5+5+1
- ウラコン
- ムトタト
- カミノミズ
さらに、
- 放火魔をさがせ
- 幽霊からの電話
という、小学生を主人公にした2編も収録されています。
全部で8つのミステリーを楽しめます。
タイトルそのものが謎になる
「6×3」
「1/64」
「10×5+5+1」
何も知らずに見ると、
「数学の問題?」
と思うようなタイトルです。
しかし、それぞれ事件と関係があります。
さらに、
「ウラコン」
「ムトタト」
「カミノミズ」
も、最初は意味が分かりません。
物語を読みながら、
「このタイトルはいったい何を表しているのだろう?」
と考えられるのが、本作の面白いところです。
タイトルの意味が分かったときに、
「そういうことだったのか」
と納得できる。
難解な暗号を解くというより、身近なものから答えを見つけるタイプの謎解きです。
主人公は本当に「非情」?
作品名の『おれは非情勤』は、「非常勤」と「非情」を重ねたタイトルと読めます。
主人公自身も、
教師という仕事へ深入りしない。
子どもたちとも距離を置く。
必要な仕事をしたら次の学校へ移る。
という姿勢を取っています。
かなり冷めた教師に見えます。
ところが物語を読み進めると、
「本当に非情なのだろうか?」
と思えてきます。
事件が起きれば真相を調べる。
子どもが問題を抱えていれば、その背景まで考える。
放っておけばいいことにも、結局は関わります。
熱血教師ではありません。
かといって、子どもたちに無関心でもありません。
距離を置こうとしているのに、結局は放っておけない。
この少し矛盾したところが「おれ」の魅力です。
子ども向けの作品なの?
本作の中心となる『おれは非情勤』は、1997年から1999年にかけて学習雑誌『5年の学習』『6年の学習』に掲載された作品です。
そのため、文章や謎解きは比較的入りやすく作られています。
ただし、
「子ども向けだから幼い内容」
と考えると少し違います。
学校内で起きる事件だけでなく、子ども同士の関係や教師側の問題なども扱います。
殺人事件が登場する話もあります。
そのため、大人が読んでも十分にミステリーとして楽しめます。
逆に考えると、
「難しいミステリーは苦手だけれど、東野圭吾作品を読んでみたい」
という人には入りやすい一冊です。
良かったところ
短く区切って読める
本作は、一つひとつの話が長くありません。
長編ミステリーのように、
大量の登場人物を覚える。
何百ページも伏線を追う。
という必要がありません。
少しずつ読み進めても内容を見失いにくいため、読書時間をまとめて取れない人にも向いています。
自分でも推理しやすい
読者にも手掛かりが示されます。
そのため、
「もしかするとこういう意味では?」
と考えながら読めます。
もちろん、全部見抜けるとは限りません。
それでも、真相を読むだけではなく、
自分でも一度考えてから答えを見る
というミステリー本来の楽しみ方がしやすい作品です。
学校という舞台が身近
本作の舞台は主に小学校です。
教室。
体育館。
運動会。
修学旅行。
子ども同士の関係。
多くの人が経験したことのある場所や出来事が登場します。
特殊な世界ではなく身近な学校だからこそ、事件とのギャップがあります。
「学校でこんなことが起きたら?」
と想像しながら読みやすいのも魅力です。
主人公の距離感がちょうどいい
熱血教師が、
「子どもたちのために!」
と突っ走る話ではありません。
「おれ」は少し皮肉っぽく、冷めています。
だからこそ、必要なときに見せる優しさが目立ちます。
タイトルの「非情勤」と実際の主人公とのズレも、最後まで楽しめるポイントです。
気になったところ
本格ミステリー好きには軽め
複雑なトリックや大規模などんでん返しを期待すると、物足りなく感じる可能性があります。
もともと小学生向けの媒体に掲載されていた作品です。
そのため、難しさを競うタイプのミステリーではありません。
ただし、
難しくない=面白くない
ではありません。
むしろ、
「今日は難しいことを考えずにミステリーを読みたい」
というときには、この軽さが長所になります。
8編すべてが同じ主人公ではない
タイトルから、
「非常勤講師の『おれ』が8編すべてで活躍する」
と思うかもしれません。
実際には、「おれ」が主人公となるのは6章です。
「放火魔をさがせ」「幽霊からの電話」は、小学生が主人公となる別作品です。
どちらもジュブナイルミステリーという点では共通していますが、読み味は少し変わります。
購入前に知っておくと戸惑いにくいでしょう。
こんな人におすすめ
『おれは非情勤』は、特に次のような人に向いています。
- 東野圭吾作品を気軽に読みたい
- 短編ミステリーが好き
- 自分でも謎を考えながら読みたい
- 学校を舞台にした作品が好き
- 長編小説を読む時間があまりない
- 難しすぎるトリックは苦手
- 普段あまりミステリーを読まない
反対に、
複雑なトリック。
強烈などんでん返し。
重厚な人間ドラマ。
を最優先する人には、少し物足りない可能性があります。
気軽な短編集ならこちらも
東野圭吾さんの作品には、『おれは非情勤』以外にも軽いテンポで読める短編集があります。
その一つが『殺人現場は雲の上』です。
こちらは、客室乗務員のエー子とビー子が事件に関わっていくユーモアミステリー。
学校と航空業界で舞台はまったく違いますが、
短編で気軽に東野圭吾のミステリーを楽しめる
という点は共通しています。
重すぎない東野圭吾の短編をもう一冊読みたい方は、『殺人現場は雲の上』の感想・あらすじも参考にしてください。

感想まとめ
『おれは非情勤』は、
小学校を舞台にした、読みやすいミステリー短編集
です。
主人公は、推理作家を目指しながら非常勤講師として働く「おれ」。
教師という仕事にも、子どもたちにも深入りしないつもりです。
ところが、赴任先で事件が起こるたびに謎を追い、結局は子どもたちの問題にも関わっていきます。
タイトルは「非情勤」。
でも、実際の主人公はそれほど非情ではありません。
このギャップが、事件の謎と同じくらい本作を読みやすくしています。
また、
「6×3」
「1/64」
「ウラコン」
など、意味の分からないタイトルが事件の手掛かりになっているのも特徴です。
難解な本格ミステリーというより、
読者も一緒に考えながら答えへ近づく作品
です。
東野圭吾作品を初めて読む人。
長編を読む時間がない人。
少し軽めのミステリーを読みたい人。
そんな人に向いています。
重すぎない東野圭吾作品や、自分でも謎を考えながら読める短編集を探している方におすすめです。

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